2013年03月20日

『津波の墓標』

一冊の本を携え、東北の地に赴く。

向かった先は、仙台から車で三陸自動車道に入り、石巻から一般道へ。国道398号を北上し、石巻市→女川町→南三陸町。先の東日本大震災で津波の被害に遭った被災地を巡った。

あの日から2年――被災地の瓦礫は概ね撤去されているように見えたが、何もない更地と、その中にぽつんと建つ未だ撤去されていない建物が、そこが津波の被害に遭った場所であることを雄弁に物語っていた。震災前の情景はなかなか想像できない――何もないという一点が、当時のTV画面から伝わってきた津波の印象をより強くする。

津波の被害に遭った場所で特に目立っていたのは、まだ残っている小中学校等の建物だ。2年経った今となっては、被災地の被害の象徴となっているような箇所も目立ったが、石巻市の門脇小学校などは、私は正視することができなかった。

nagabuchi

また、今回はあまり事前の情報収集等せずに地図だけ把握して北上したのだが、後から再確認してみると、児童74名が亡くなり悲劇の舞台となった石巻市立大川小学校も、すぐ傍を通っていたことに気付き、驚く。おそらくは車を運転していた私の視界にも入っていたはず。無意識に避けてしまっていたのかどうか……。

同様に目立ったのが、仮設住宅の多さだ。そこで暮らす被災者の方々が、少しでもストレスなく生活できる環境がいち早く取り戻せるよう、願わずにはいられなかった。

石巻市から南三陸町まででも、一般道では約80km・3時間。事前の考えではさらに北上して気仙沼市や、岩手県に入って陸前高田市や釜石市あたりまで行けるかと計画していたが、もはや疲労困憊。三陸海岸沿いの国道はアップダウン&コーナーや、道幅も狭い箇所も多い。また、津波の被害に遭った場所を、しかも他県のナンバーで運転しているという意味でも、精神的にもかなりの疲労があった。

一方、「南三陸さんさん商店街」等の活況を見て、かの地の復興は確実に歩み出していることも実感できた。その一助のために自分はいったい何ができるのか――そう簡単に答えは出ないが、考えずにはいられなかった。

−南三陸さんさん商店街
http://www.sansan-minamisanriku.com/

そんな中で読み進めていた本が、石井光太の『津波の墓標』(徳間書店)だ。

津波の墓標

先に読了していた『遺体』の続編ともいうべき作品――著者の取材した観点で描かれたノンフィクションだ。

−『遺体』[2013.02.11]
http://blog.livedoor.jp/miyanofu1204/archives/1761982.html

ここに描かれている情景は、未曾有の大震災という状況下におかれた、まさに「人々の業」のようなものだ。またそこに漂うは、TV画面や新聞等からは決して伝わってくることのない、腐敗臭や異臭、そしてまさに死臭であろう。そんな中で、人間はどうなってしまうのか、またどうあるべきなのか――考えずにはいられなかった。

この考えをより深めていくために自分はどうあるべきか――またこの地を訪れる自分がいるような気がしている。

今回眺めた東北の海は、あまりに美しく、そしてあまりに穏かであった。改めて、先の震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、かの地の一日も早い復興を祈念いたします。

sanriku


miyanofu1204 at 23:53コメント(0)トラックバック(0)Book Review  

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